第二章

19

 あっという間に七月となり期末考査の期間がやってきた。高校に入り、二度目のテストである。小テストや学力検査のためのテストなどはあったが、いわゆる直接成績に繋がる大きなものは学期に二つ。中学生のころにも何度も経験してきたはずだが、定期考査独特…

18

 六月も終わりに近づいている。梅雨真っ盛り、何日も降り続いた雨ですっかり街じゅうが水に沈んでいるようだった。オフホワイトのカーテンが揺れ、ぬるんだ風が入ってくる。夏が近づくが、まだ梅雨明けは遠い。弱まった雨足は、帰る頃には止んでくれるだろう…

17

 ゆるやかに雨が降り続いている。梅雨の晴れ間は短いもので、まったくワルツを踊ったあの日の青空が懐かしくなるほど空は厚い雲で覆われていた。草木は雨粒の重みで大きく垂れ、地面にはいくつもの水たまりができ、大なり小なりさまざまな波紋を立てている。…

16

 いったい、ぜんたい、どうなってるの!? ――の心情はこうであった。 マジックアワーに起きたできごとは、もしや本当に魔法かなにかだったのではないかと思うほど大きな衝撃を与えて瞬きの間に過ぎていった。 あれは魔法が見せたまぼろしだったのではな…

15

 授業が終わって、部活もないからと池袋に向かった帰りだった。中板橋にも画材店はあるが、高校に上がり技術的にも表現的にも広がった彼女の世界はその小さな文具屋の片隅に置かれた画材たちでは物足りない。そうして立ち寄った池袋で行き交う若者たちの一人…

14

 一時はどうなることかと思われた富士田組が再びカップル練を再開させてしばらく。六月になり、要が日本へ帰ってきた。「うわあ、武道館ってスゴイね!」 九段下駅を出て坂を登っているときから高揚が止まらなかったが、幼なじみと一緒になってフロアを見下…

13

 富士田組が小笠原ダンススタジオから兵藤ソシアルダンスアカデミーに移籍したのと同じく、季節は移り変わりもう間もなく六月。東京にも長雨の季節がやって来る。テレビの天気コーナーでも、有名な気象予報士がそろそろ梅雨入りかと説明していたばかりだ。 …

12

 五月下旬、都内某所。 その日、兵藤組と赤城組は有明のダンスフロアで強化練習に参加していた。練習を終えて、真子は群馬へ、雫は宿題があるからと早々に帰路に着くのを見送ると、清春と賀寿は夕飯を摂りにファミレスへ入った。各々好きなメニューを頼んで…

11

 二人なら――と楽観的に考えていたではあったが、やはりリードとフォローという問題は、そう簡単に一筋縄でいくようなものではなかったようだ。 緊張の週末を終えて、ノービス戦の結果を聞く為には五組の教室を訪れた。そこには賀寿も居て、馴染みの四人で…

10

「、これたたらくん家に届けに行ってくれる?」 夜、夕飯を食べ終えてリビングでまったりとテレビを見ていると、母親が大きな紙袋を手に声を掛けてきた。 はソファから立ち上がってその紙袋を受け取りながら首を傾げる。「なあに、これ」「田舎から届いた野…

09

 人を好きになるというのは、モネやルノアールなど、好みの美術作品を見る時の気持ちにどことなく似ていた。かつて画商達が、とびきりの作品を見た時に走る稲妻のようなアドレナリンや、欲しくて堪らなくなるその衝動を、よく「恋」と称したものだが、はその…

07

 その日の放課後、は久しぶりに小笠原ダンススタジオに寄ることにした。中学の卒業式終わりに、たまたま寄った以来だ。 揚げ物の美味しそうな匂いにつられそうになりながら、線路沿いを歩いていく。とんかつ一番の看板が見えて、すぐ隣がスタジオの入ったビ…