08
それから暫くして、は多々良から正式にカップルを組んだ報告を受けた。 部活のない放課後、少しずつ西日がその眩しさを増している中板橋の駅前を歩いていく。携帯に届いた写真を見ながら、よかったよかった、と心の中で安堵していると、トントン、と肩を叩…
あなたの鼓動を聞かせてよ第一章
06
事のあらましを大まかに告げた後、多々良が急に遠い目をしたかと思うと、大きく溜め息を吐いた。 賀寿が訝しげにそれを見つめると、もじもじと握った拳の指先を擦り合わせている。「あのさ、兵藤くんは……その……」「なんだで」「のこと気になってるよね…
あなたの鼓動を聞かせてよ第一章
19
「うち、ここなの」 住宅街を歩いて、彼女は一軒家の前で止まった。「富士田んちは」「歩いて五分くらいかな?」「ふうん」 日本によくある二階建ての洋風な家で、ガレージと小さな庭がある。プランターに植えられた花が黄色や紫、ピンクなど色とりどりに咲…
あなたの鼓動を聞かせてよ第一章
18
あっという間に一週間は過ぎていった。 気が付けばもう四月も終わろうとしていた。日差しは、日に日に強く照りつけるようになり、鼻孔を擽る香りが少しずつ夏に近づいている。校門前の桜並木もすっかり緑色に変わり、いつもの風景を取り戻していた。 変則…
あなたの鼓動を聞かせてよ第一章
17
次の日。昼休み、お手洗いから帰る途中、は多々良のクラスの前で足を止めた。 幼馴染と言えど、もう高校生。あまり干渉しすぎても良くないとは思うが、本心としては、やはり少しばかり幼馴染が心配だった。 中学時代にやっと多々良離れのチャンスかとは思…
あなたの鼓動を聞かせてよ第一章
16
「、女の子って何考えてるの」 はどんよりとした様子の幼馴染に思わず目を瞬かせた。 まさか、昼休み、開口一番、彼からこんな質問がされるとも思わなかった。その上、様子が明らかにおかしい。 要の試合について聞こうとしたが、彼女は思わず口を噤んで、…
あなたの鼓動を聞かせてよ第一章
15
多々良と賀寿が、要の出る東京ダンスグランプリを見に行っている中、は部活を終えて帰路に着いていた。 先程、携帯を確認すれば、その多々良から「仙石さんたち決勝進出! 凄すぎて圧倒されてる」というメールが来ていた。それに頬を緩めて、は後楽園に思…
あなたの鼓動を聞かせてよ第一章
14
「たーくん、のクラスはまだかあ」 は終礼が終わって、多々良の教室の前へとやって来た。 だが、扉が閉まっており、彼のクラスはまだ終礼中のようだった。それが分かるとはスクールバッグを肩から下ろして、両手でぶら下げながら、窓側の壁に寄り掛かる。西…
あなたの鼓動を聞かせてよ第一章
13
青空に桜が咲き誇る四月。 甘い梔子の花の香りもそこかしこに広がり、桜の花びらとともに風に乗ってやってくる。道端には小さな緑が沢山息吹き、辺りを彩っていた。 愈々春になった。 真新しい制服に身を包み鏡の前に立つ自分の姿を見て、はよし、と口元…
あなたの鼓動を聞かせてよ第一章
12
一月二月も早々に過ぎ、季節は春に近付いてきた。時折吹く風が、肌寒さの中に花の香りを載せている。 は、背が伸びて短くなったスカートの裾を気にして、指で伸ばしながら、電車に揺られていた。 もうすぐ、この制服とも別れを告げる。三年前は膝頭が隠れ…
あなたの鼓動を聞かせてよ第一章
11
「たーくん、初詣一緒に行かない?」 というの言葉が発端だった。 年も明けてからりとした爽やかな寒さの三ヶ日。 家で勉強とテレビ、そして美鈴特製のお節料理も満喫して、時間を持て余しかけていた多々良は、からの電話に二つ返事で頷いた。 吐く息も、…
あなたの鼓動を聞かせてよ第一章
10
は、静かな廊下を歩いていた。 いつも授業を受けている教室からは離れた棟だからか、部活動をする生徒たちの声も聞こえない。それとも、今日が冬休み初日のクリスマスだからだろうか。 どちらにせよ、は落ち着いた気持ちでゆったりと目的地に向かって歩いて…
あなたの鼓動を聞かせてよ第一章