幸せのプティ・フール
「母は、お菓子づくりが得意でした」 スクールから帰ると、窓辺のキッチンには明るい光が灯っていた。カシャカシャ、トントン、あふれる美しい音色たち、コンポートのような淡い金色に染まる母の背中――今でも鮮明に思い出すことができる。「バターたっぷり…
幸せのプティ・フール
きしかいせいのタルトレット
夜明けまえの、しん、と濃密な空気が辺りを包んでいる。布団に潜らなければ、きっと凍えきってしまう。それなのに、ベッドの中にはあらゆるものが落ちていて、どこにも私の居場所はないようにも思えた。悲しみ、怒り、絶望、孤独、それから、彼のあのマシュ…
幸せのプティ・フール
焦げたカラメルソース
しとしとと窓を鳴らす雨滴のようなピアノ・ジャズが流れていた。厚い灰色の空から雫が降りそそぎ、幾重にもカーテンを作る。すべての光を淡く遮るような、上等なレースのカーテンだ。 静かにドラムのハイハットが軋み、やがてテナーサックスの低音がするり…
幸せのプティ・フール
魅惑のサヴァラン
ふわり、漂う香ばしい匂いに、カシャ、という乾いた音が弾ける。「よし」 携帯を宙に掲げていた私は、画面に映し出された写真にひとりでに大きくうなずいて、淀みない手つきでそれを操作し始めた。 白い丸皿に載ったモンスターボールほどの焼き菓子。鮮や…
幸せのプティ・フール
ふぞろいなプロフィットロール
静まり返ったスタジアムの一室で独り、佇んでいる。 いつもはポケモンたちでにぎやかなそこも、今日だけはまるでリーグ戦が終わったあとのように冷ややかな空気で耳を塞いでは、妙に心臓を迫り立てている。 静寂と高揚、これまで幾度となく味わった感覚だ…
幸せのプティ・フール
ヌメラのねがいぼし
きらり、きらり、水面が輝いている。 ガラル随一の都会、シュートシティ。ピー、ピー、とキャモメが鳴くのを耳に流しながら、私は運河沿いを歩いていた。しばらく優雅な散歩を満喫したところで、ヴーとお尻に振動が伝わる。取り出した携帯には一通のメッセ…
幸せのプティ・フール
栄養満点ガラルスコーン
お母さんは、料理が得意だった。とくにお菓子づくりはパティシエ並みで、スクールから帰るといつもおいしいお菓子が私を待ち受けていた。 バターたっぷりのクッキーにしゅわっととろけるシフォンケーキ、モーモーミルクを使ったジェラートやキャラメリゼし…
幸せのプティ・フール