第四幕 第五話
よくあたたまったちろりをお登勢さんから受け取るわたしの横で、やってらんねぇよな、とかなんとか、銀さんはぶつぶつとつぶやいている。「だから、ちょっと悪かったかなって、思ってるって言ったじゃないですか」「あーでたでた、最近の若者はすぐそうやっ…
たゆたえども沈まず第四幕 春にわくのは虫だけじゃない
第四幕 第四話
さて、うら若き乙女たちの保護者役を拝命したわたしは、やや緊張した空気の大江戸デパートを歩いていた。 前には神楽ちゃんと征夷大将軍茂茂の妹、そよ姫が楽しげにあっちへふらふらこっちへふらふら、その光景はなんとも微笑ましい。ちょっとお姫様のボデ…
たゆたえども沈まず第四幕 春にわくのは虫だけじゃない
第四幕 第三話
話はこういうことだった。 このごろ、仕事から家に帰ると奇妙な視線を感じるという。オートロックかつ入り口にコンシェルジュもいるという完全防備の最新マンションに住んではいるものの、お風呂に入るとき、部屋でリラックスするとき、はたまた眠るとき、…
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第四幕 第二話
「はぁ食った食った」 夜風が耳の裏を撫でる。暦の上では春とはいえ、まだ片足は前の季節に突っ込んだままだ。呑気に鼻へ小指を刺している銀さんの隣でぶるり肩を縮こめる。 万事屋で囲んだ夕食が、お鍋だったことが救いだろうか。「わざわざごめんなさい、…
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第四幕 第一話
「ありゃ、姉さん良いモン食べてやすねィ」 仄かに花薫る縁側。先輩女中から頂いた桜餅を今まさに口に運ぼうとして、左手から間の抜けた声が飛んできた。口を大きく開けたまま声の方を向くと、春のやわい日差しに煌めく金糸が目に映る。 沖田さんだ。なにも…
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第三幕 第十話
「なぁー銀ちゃん、なんで最近おでんばっかりアルか? はおでんマイスターにでもなるアルか?」「知らねェよ、アイツに聞けアイツに」「もう今週四回は食べてるアル、いい加減食べ飽きたネ。そろそろ私がんもどきになってしまうヨ」「四回ならいいだろ。俺な…
たゆたえども沈まず第三幕 美味しいおでんの作り方
第三幕 第九話
やっと、あるべきところに気持ちが収まったかのようだった。 お登勢さんの何気ない言葉は、ふわりふわりと空を漂う綿毛のように落ち着かぬ心をそっと撫で付けてくれた。 今となって、どれだけ自分勝手に生きていこうとしていたかが身に染みてわかる。自分…
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第三幕 第八話
そういうわけで、わたしたちは階下のスナックお登勢に訪れた。「ばーさん、こいつになんか旨いもん出してやって。あと、酒」 あ、俺にも勿論な、と言い添えながら、銀さんは椅子によっこらせと年寄り臭く座る。「銀時、アンタそんな金持ってんのかい」「んな…
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第三幕 第七話
翌日は、重たい気持ちでの出勤となった。「昨晩は、申し訳ございませんでした」 早朝の微かに湿った空気の中、目の詰まった畳に指先を突いて頭を下げる。井草の香りが鼻をくすぐるが、ちっとも胸のざわつきや吐き気は安らぐことはない。「何が悪いか分かっ…
たゆたえども沈まず第三幕 美味しいおでんの作り方
第三幕 第六話
「やー、おりょうちゃんが居らんと聞いちょったき、帰ろう思ったんじゃが、こりゃ帰らんくてよかったのぉ」 ガハハ、と大きな笑い声の横で、わたしは、それはよかったです、とできるだけ嫋やかに笑みを浮かべてお酒を注ぐ。 スナックすまいるは今日も大繁盛…
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第三幕 第五話
神楽ちゃんとの買い物からしばらく、相変わらず穏やかだが忙しい毎日は続いていた。 今日も朝から仕事だ。まだ薄っすらと紺色を纏った空気の中を早足で歩いていく。冬の朝は遅く、早番の日には、今日のように暗いうちに家をでることが殆ど。空にはまだ銀色…
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第三幕 第四話
お登勢さんから頂いた道中着を羽織るも、冷ややかな風が首元をスッと撫ぜる。「うぅ、さむい……」 以前は毎日のように使っていた道のりを歩きながら、わたしは羽織ものの襟元をぎゅっと握って身を縮こめた。 ついこの間まで秋めいてきたな、と思っていた…
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