第二幕 第三話
そこそこに賑わう定食屋、衝立に遮られた畳の間に、二人の男が頭を突き合わせている。「それで、山崎。なにか掴めたのか」 丼をかっ込み、一人の男は言った。対して山崎と呼ばれたもう一方は、その丼の匂いに顔を顰めていたが男の言葉を受けるや否や「それ…
たゆたえども沈まず第二幕 立ち寄らば大木の陰
第二幕 第二話
あの後、買い物した荷物を銀さんに任せて、わたしはターミナル近くの大江戸デパートに来ていた。《大江戸デパート》とデカデカ書かれた看板を見上げる。空高く聳え立つビルと、空に浮かぶ船が、なんとも近代的だ。 それから――。 ――本当、不思議だなあ…
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第二幕 第一話
「アレだ。お前もう諦めた方がいいんじゃね? 人生じゃねーよ、アレだよ、アレアレ」 今日もかぶき町は晴天だ。 雲ひとつない青空の下、呆然と立ち尽くすわたしの横で、銀さんが頭をボリボリと掻きながら欠伸を噛み殺して「ご愁傷さん」と言う。 目の前に…
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第一幕 第七話
運命の日となった。 隊士の一人に連れられて、屯所内を進む。二度目だと言うのに、ひと足ひと足踏み締める度に緊張が増して、みぞおちのあたりが気持ち悪い。何回か廊下を曲がったところで、隊士は足を止めた。「副長、連れてきました」 襖の向こうから「…
たゆたえども沈まず第一幕 あの夏の蝉はもう鳴かない
第一幕 第六話
それからまた日が経ってしまった。早く早くと思えども、そう現実は上手くいかないのが世の定めみたいなもので、仕事も暮らす場所もまったくもって見つからない。 かぶき町と言えど、わたしのような後ろ暗い人間はなかなか相手にしてもらえるところはない。…
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第一幕 第五話
「、綺麗アル」「おかしくない?」「おかしくなんて! 大丈夫ですよ!」 神楽ちゃんと新八くんに励まされながら、鏡の前で頬をぷく、と微かに膨らませる。「これだから童貞は、まるでさん貴女の為にあるようなドレスですね、くらい言えないアルか」「なっ、…
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第一幕 第四話
「お前」 唸るような声に、びくんと身体が跳ねる。一人分以上は離れているというのに、鋭い眼光で睨みつけられているのがわかった。気圧されそうな、息をするのが苦しいような、そんな感じ。「え、なになに? そっちのマヨラーも知り合いなわけ?」 事情を…
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第一幕 第三話
坂田さんと出会ったのは、先生の遣いに着いていったときのことだ。列車に揺られ、山間を行くこと一刻。現代でいう都会に辿り着いた。思えばそこがかぶき町であり、今わたしが過ごしている場所でもあったのだろう。その頃はこちらの地理には明るくなく、そこ…
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第一幕 第二話
「ありがとうございます、坂田さん」 タオルで体の汚れを拭いながら礼を述べると、ソファに横になってジャンプを読んでいた坂田さんは、雑誌から目を離さずに「いーってことよ」と返事を返した。 あれから、坂田さんに連れられるがまま、白いスクーターバイ…
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第一幕 第一話
「姉ちゃん、これどうやってやんの?」「これは? どうやって作るの?」「だめ! あたしが先に聞いたの!」「なんだと!」 子どもたちがわらわらと集まってきては、揉みくちゃにされる。「こらこら、喧嘩しないの。順番」 そのあまりの勢いに苦笑いを浮か…
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