空のない街

1-10

 外へ出ると、夜空の下激しい突風がクラウドたちを襲った。先ほどまで彼らを覆っていた、重く張り詰めた空気が吹き飛ばされる。だが、血の匂いはまだまだ鼻の奥にこびりついているようだった。 大きな機体がヘリポートに着陸した。扉が開くと、上等そうな革…

1-9

「なんとかして、逃げられないかな」「どうだかな……。厳しいかもしれない」 剥き出しのコンクリートの壁の向こうから、ティファとクラウドの話し声がする。 たちは今、独房に閉じ込められていた。三畳ほどの部屋は、無機質なコンクリートの壁で覆われてい…

1-8

 どれほど、そこにいたのだろうか。滔々と意識の湖を揺蕩っていると、不意にあの科学者の声が聞こえてきた「まさか! 古代種の遺伝子との合致――パーセントとは、いやはや、まさかな」(古代、種……) その言葉を思い浮かべた途端、こめかみがズキン、と…

1-7

 ――ぴちゃん 水の滴る音がする。 ――ぴちゃん ――ぴちゃん 辺りは真っ暗で、なにも見えない。(ここは、どこ……) ゆらりゆらりと、ぬるま湯に浸かっているような心地だった。自分の体に力は入らず、体がそこにあるのかもわからない。ただ、意識だ…

1-6

「なんで、こうなるの」 はびしょ濡れになった白いワンピースを指先でつまみながら、ため息を漏らした。 彼女がいるのは、妙な腐敗臭のする地下下水道。クラウドに助けられたあと、無事エアリスとティファの救出に成功し――とはいえ、エアリスはロッドで男…

1-5

「ふふふ、クラウド、とびきりかわいくしてあげるね!」 ウォールマーケットの北、ひときわ目を引く建物を背に、エアリスがうれしそうに軽い足取りで歩いている。その建物――竜宮城を思わせる赤と金を基調とした、派手な外装。言わずもがな、コルネオの館だ…

1-4

「……おい」 はクラウドの声で目を覚ました。 瞼を押し上げると、目の前に、淡い明かりを受けて金の絹糸が煌めいていた。さらり、動きに合わせて揺れる様は、まるで風そよぐ、小麦の丘のよう。整った精悍な顔立ちが彼女を覗き込んでいた。 いけない、わた…

1-3

 ――ぴちゃん 目が覚めると、甘い花の香りがした。どこか花畑にでもいるような、そんな穏やかな香りに包まれている。瞼の裏に淡く光が注いで、その光の海でぷかぷかとは浮かんでいた。(夢、だったのかしら) 昨日今日と目の当たりにした恐るべき光景が、…

1-2

 身寄りもない、家もない、金もない、ないない尽くしのは、セブンスヘブンで世話になることになった。いささか信じがたいことではあったが、なんと彼女は猫で――まだ憶測ではあるが――しかも、その猫をクラウドが拾って帰ってきたのだという。したがって、…

1-1

 壱番魔晄炉の爆破を終えたアバランチのメンバーは、アジトでもある七番街のバーに集まっていた。常連客を追い出して、重大な責務を果たした面子がヴィンテージとは言いがたい使い古された木製テーブルで、各々ジョッキをかわしている。「バレット、クラウド…