episode.10
「死にたい、死にたい、死にたい死にたい死にたい」 そらとぶタクシーの中で、過ぎゆくホワイトヒルの雄大な景色を眺めながらぶつぶつと呟く私に、「ここで飛び降りないでね」と副社長はさらりと告げた。それはフリだろうか。とにかく、怒涛のメロドラマ展開…
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episode.9
「やあ、お待たせ」 突然の邂逅を終え、スボミーインの一階にあるカフェラウンジのソファにどっぷり座っていると、背後から副社長がにゅ、と顔を出した。「おかえりなさいませ」「うん、ありがとう。なんだか浮かない顔をしているね」 会って数秒で見抜くこ…
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episode.8
「おまえとずっと一緒にいられたら、幸せだろうな」 あの人は言った。大きな大きな手で私の手を包みながら。竜のようにあたたかな温度が心地よくて、ずっとつないでいたいと私はおもった。 やさしくそそがれる甘く垂れた碧い瞳。海のようにも、空のようにも…
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episode.7
「くん!」 ふり向いた先の、その人に私は瞠目する。「カブさん!」 お久しぶりです! と立ち上がって握手を求めようとして、偉大なほのおの男は着火線についた火のごとく駆け寄り、「よかった、生きていたのかい」私の肩をガッと掴んできた。「え?」「キ…
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episode.6
その日の収穫は、結局、ほのおのいしやみずのいしというポケモンの進化に関わる鉱石ばかりだった。結局、なんて言うとマニアには怒られてしまいそうだけれど、フローライトが見つからなかったのをどこか残念に思っている自分がいた。 次の日はラテラルタウ…
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episode.5
「なんだって、そのダイマックスバンドには鉱物が?」 無事ラプラスを捕まえた私たちである。それをラボに送るかどうかで悩み、やっぱりいいやと結論づけたあとおまけ程度にそんなことを告げると、御曹司の目がこれでもかとギラつき始めたのがハイライトだっ…
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episode.4
あのあと、ハシノマ原っぱを抜けて私たちはその足でげきりんの湖に向かった。 あいにくの天候ではあったものの、もちろんやまおとこセットの中に雨具を用意していたので問題はなく、白いレインコートですっぽりと身を包んだ副社長は、それはもうキャタピー…
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episode.3
コン、カン、コン、カン、意気揚々と金属が岩岩肌を打つ音が聞こえてくる。リズムよく刻まれるそれは、まるで岩と金槌のシンフォニーを楽しむ特別コンサートにでも招かれたかのようだ。 さて、本日の道先案内人である私は、現在、断崖絶壁に近い岩へと立ち…
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episode.2
副社長のトンデモ発言を受けたのは数日前のこと。助けてもらってワガママを言うのはなんと恩知らずとわかりつつ、私はもうあのときなにもかもが吹っ切れていた。初対面でそんなことを言う人間の気が知れないし、第一、ボクのところってなに? どこ? どこ…
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episode.1
将来の夢は、小さいころから決まって「およめさん」だった。 白いふわふわなドレスを着てステンドグラスのきれいな教会で式を挙げる。そうだな、ナックルシティのあの教会がいいかもしれない。あまり大きくはないけれど正統派の歴史ある教会。長いベールを…
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