潜在的に、惹かれ合う――。
#Chapter xx – he and his mehanic
僕の心臓を動かせるのは君だけ
厄介だな、とつくづく思う。目の前の女が机の上に載った小型の機械を弄るのを見ながら、ジェームズ・ボンドは小さく息をついた。 ミディアムロングの髪の毛をざっくりと結い上げ、仕事だからとやや控えめなメイクだが、それは彼女にとても似合っているだろ…
#Chapter 00 – the beginning
革命返し
なぜ、と彼女は言う。「ただの気紛れだ」 彼は答える。「もし、わたしがスパイだったら?」 色の読めないヘーゼルの瞳で彼女は続ける。「スパイにスパイを仕込むとは、面白い冗談だ」 ああ、それは本当に、馬鹿げているとでも言ったらいいか。「ねえ、わ…
青に染まる夜半
ありふれた人生を歩んできたように思う。両親はいなかったが叔母たちは優しく、血の繋がらない娘にそれはそれは愛情をそそいで育ててくれたものだ。 自分の人生において、疑うものは兎角なく、与えられるもののそのほとんどをすなおに受け容れてきた。 ・…
気づかぬふりの美学
その日の天気は雨だった。降りそそぐ滴がしめやかに窓を打ちつける。辺りは霞み、吐く息は白く染まる。室内はおどろくほど静かで、そばを通り過ぎる車の水をはじく音さえも聞こえてくる。 ぐるりぐるりとおもちゃのレコーダーを巻いて、「いい子に待ってい…
目映き閃光
地下への鍵は想像よりも容易く開かれた。静まり返ったオフィスビルを、ボンドはワルサー片手に突き進む。「撤収だ」と耳元で告げるのはタナーだ。了解《オーケー》とボンドは答えたが、実際には命令に従うことなく、中央エレベーターの入り口にもたれかかる…
