黎明に咲く

あなたとともに

※ゲームの展開・結末とは異なる部分がございます。お気をつけて。  ――Nec tecum possum vivere, nec sine te.  哀れな女であった。裂け目からでてきたまがいもの。湖の叡智により、全知の記…

最終話 黎明に咲く

「身体は、どう?」 目が覚めた先は、コトブキムラのギンガ団本部であった。医務室の白熱電灯が瞬いて、その明るさにしばらく目を細めていると、声を掛けてきたのは医療隊の長――キネさんだ。久方ぶりに見るその姿に、とっさに唇を開くが、なにかを発しよう…

第五話 記憶の淵

「とんだ女がいるモンだと思ったんだ」 ぽつりぽつりと紡がれる言葉は、やわらかな胡弓の響きであった。琴線がどうしようもなくくすぐられる。聞いているだけでその音色に縋りついて、身を委ねて、なにもかもを捨て置いてしまいたくなる。モモンの実をいきな…

第四話 曙の神様

 唐突に手持ち無沙汰になったものだから、まるで地を這うヌメラのような心地で過ごすことになってしまった。そんなことを言ったらヌメラに失礼かもしれない。空は依然妖しい色をしており、眺めるだけでどことなく胸のうらを撫でられる気がする。 なにをする…

第三話 うたかたの心中

 リッシ湖での試練は無事終わった。昂揚ぎみに、頭の中へ語りかけてきたのだと口にするのはセキさまで、アグノムという湖のポケモンとの対峙はなかなかに印象的だったようだ。隣では試練を受けた少女がアグノムより受け取った「きば」をじいと眺めている。こ…

第二話 小さき箱庭

「さん」 ゆさゆさと揺り動かされ、わたしは目を覚ました。目を開いた先には睡たげなまあるい飴玉と灰色の雲。ぺろりとわたしの口もとを生あたたかいなにかが伝うから、微睡みの余韻もなく飛び起きることとなった。「……ひゃ、な、なに!」「ゾロア、いきな…

第一話 長夜に見る夢

 すでに辺りは薄暮に包まれていた。それが赤い空のせいなのか、それとも過ぎゆく時のせいなのか、はっきりとはしなかったが、たしかに時間に際限はあった。このままでは夜が来る。その前にどうにか次の手を打たなくてはならないものの、わたしたちはただ木立…