第二幕 六

「ぜーんいん!」
 携帯をいじっていた直哉の頭上に、犬が尾を振って飛びついてくるような溌溂とした声が落ちてくる。直哉が眼だけをジロリと持ち上げると、その声の主は彼の前に立っていた。
「なあ、仏語の宿題やってきた?」
 許可を出す前に、彼は前の席に跨るようにして座り直哉の顔をのぞきこんでくる。思わず軽く舌を打ったが、それでへこたれる男ではない。「知らん」と答える直哉に、ぽんと手を打ち、「そっか、おまえ月曜からウチに来たんだったな」と篠宮は白い歯を見せる。昨日とちがい、前髪を上げ、晒した額が彼の無邪気さを助長するようだった。直哉はあからさまに不機嫌な顔をしたが、相手にするのも馬鹿げていると携帯に視線を戻した。
「怒んなって、オレが見せてやるから」
「いらん」
「まあまあ、ジョアンナ、香織ちゃんとちがってケッコーうるさいからさ」
 そう言って手を差し出してくる篠宮に直哉は胡乱な視線を向ける。深く椅子に腰かけ、なんとも気怠い姿であった。
「ほら、ノート」
「ない」
「は? おまえ学校になにしにきてんの?」
 こめかみに篠宮の軽々しい声が突き抜けた。このままその能天気な額を足蹴にしたいところだが、まさか彼は、直哉が成人のしかも四捨五入すると三十になろう男だとは、知る由もない。
「こっちは来たくて来てんやないねん」ここまできては意地だと顎を上げ低くゆったりとした調子で告げると、篠宮は唇を尖らせる。アヒル口というやつだ。やけに癪に障った。
「どうせ通うなら楽しみゃいいのに。はっちゃけないと損だぜ? コーコーセイカツなんて今しかねえんだし、オレは禪院と出会えたの運命って思ってるけどな」
 この上寒いときた。オエ、と目を回すと、直哉は、「男と仲良うするシュミはないねん」と携帯をブレザーの内側へしまい、スラックスのポケットに手を突っ込んで立ち上がった。「おい、禪院! 宿題!」篠宮の声に背を向けて、直哉は教室を出ていった。
 貴重な情報源が手に入ったのはありがたいことだ。昨日の特別棟の呪いは三級にも満たない低級だったが、先週金曜の午後九時、バイトがえりに駅前のコンビニで見かけたという人型の其れはおそらく重要な鍵となるだろう。背丈はおよそ一九〇センチ以上、直哉よりやや身長の高い篠宮が、遠目から見て大きいと感じる程度だったため、彼の目線よりは高いとみて間違いない。おまけにその容貌。まるで映画のエイリアンのようだったと言うのだから、「まさしく」といったところだ。
 外灯に艶めく皮膚と皮膚を剝いだような色彩、エイリアンほど頭は大きくないが、腕があり、脚があり、髪はなく異様に眼窩がくぼみ、後頭部が発達していた。だらんと両腕を垂らしながら宵闇を闊歩する。その姿を目の当たりにしたときには、しばらくその場から動けなかったという。「アレはマジでビビッた」というのが篠宮の実際の言葉だが、もし目にしたのが件の呪いであれば、階級はおよそ一級あるいはそれ以上。遭遇したらまずご愁傷様と言うしかない。しかし、その呪いは誰一人とて襲うことなく、S英館大方面へと歩いていったという。おそらく、その足で《ナルミユウヤ》を喰いに向かったのだ。
 と、なると、浮かび上がってくるのは、ナルミは無作為に選ばれた被害者ではなかったという事実だ。目の前に立ちはだかる人間や肩に触れる人間、あるいは自身を見つめ魂を半ば抜き取られた、無様で滑稽な、恰好の餌食を前にしても、その呪いの食指は動かなかった。若者がよかったのであれば、篠宮や往来を行く大学生で構わなかったはずだ。なぜ、ナルミだったのか。
 直哉は携帯を取り出し、伊地知にメールを打った。
 《ナルミユウヤの情報を至急まとめてくれへん》
 一分もせず返ってきたのは、《瀬古さんにお願いしてみてください》というなんとも気の抜けるメールだった。返事が早いのは及第点、だが、最悪だ。直哉は再三舌打ちをかましながら、通話履歴から《瀬古》の番号を呼び出し、携帯を耳に当てた。

 気の乗らない授業を伊地知の「最近授業を脱け出されているようで」という圧力に屈して嫌々ながら受けたあとは、篠宮に引きずられ学食で昼食を摂ることになった。本来ならばC校舎の四階でさっさと済まして昼寝でもしようかと思っていたというのに、とんだ誤算であった。
「禪院、なに食う?」嬉々として券売機の列に並びながら篠宮は言う。「いらん」とすげなく答えれば、「うそじゃん?」と宇宙人を見るような顔を向けてきた。
「え、ムリでしょ。昼食わないでこのあとどうやって生きてくわけ?」
「どうでもええやろ」
 直哉も屈しない男である。上層部という長いものには渋々巻かれるところはあるが。
「そんなこと言わずにさぁ、ここのメシうまいんだぜ。オレ的にはこの鶏天丼ってのがイチオシ。鶏天三本に白米と甘ダレがうまいのなんの、それで二九〇円だぜ? 信じられる? お財布にチョー優しい!」
 もはや会話を交わすことすら放棄し、直哉は学食を眺める。キャメル色のブレザー、あるいは白い指定セーター、画一化された画角のなんと寒々しいことよ。女子生徒が彼を見つめている。その熱視線に気づかぬほど、馬鹿な男でも野暮な男でもない。いつもなら無視するところだが、視線を回した拍子に目が合ってしまったために気まぐれにも目を細め口角を上げてみせる。途端、上がる黄色い声援。――これは悪うない。小馬鹿にするように眉を跳ね、視線を戻す。と、篠宮が訳知り顔でこちらを見ていた。
「なに」
「いーや? オンナノコに対してはそういう一面もあるんだなと思って」
 ハッと直哉は鼻であしらい、前を顎でしゃくる。
「もったいねー、おまえモテそうなのに。いっつも仏頂面じゃん」
「それでも女は寄ってくんねん」
「死ね」
「そらどおも」
 篠宮は鶏天丼を選んだようだった。直哉は小さく舌打ちを拵えながらもカツサンドプレートを頼んだ。
「で、昨日あのあとコンビニ行ったの?」
 学食の奥まった席に陣取り、篠宮は天丼を頬張りながら切り出した。
「そらぁな」指先についたパンくずを落とし直哉は答える。「……なんやねん」
 篠宮は箸を手にしたまま直哉を見つめていた。
「いや、案外真面目なんだなと思って」
「案外どころか大真面目やで。おまえが金曜に見かけた其れが、今頃人を喰ってるかもしれんねん」
 そこまで口にして、ああ、と思ったが、すぐにどうでもええわとカツサンドにかじりついた。四元豚を使用したロースカツサンドは、天丼の次に人気のメニューで……というのは無論篠宮の言葉である。むやみやたらに知らない人間が作ったものを食べる気にはならなかったが、この際致し方ない。
「先週、遺体が発見されたって、もしかしてそれ?」
 直哉はしらじらしく、さァなと答えた。
「マジで、答えてくんね。先生たちに聞いても知らないっていうし、ネットでもそんなんニュースになってねえし」
「ならおまえの気のせいとちゃう」
 捜査上、警察関係者および呪術総監部より報道の規制をかけているため、金曜から土曜に起きた殺人は今のところ表沙汰になってはいない。もし事件のあらましを知れば、のんきにこんな学校生活を送っている場合ではなくなるだろう。淡々とカツサンドを食べ進む直哉に篠宮はムッとした顔で、「オレ、聞いたんだよ。四丁目の工務店の前で」と続けた。
 直哉ははたと顔をあげた。「だれから」
「若いケージから。っていっても、たまたま話してるのが聞こえちまったんだけど」
 ならば、と子犬のような眼を睨むと、「おまえもいただろ、禪院」と篠宮は言った。
「よほどエエ趣味しとるみたいやな」
「だれにも言ってない。言うつもりもない。ただ、オレは知りたいだけだ」
 やけに神妙な顔をする篠宮に、直哉はカツサンドを置き指先をおもむろに擦り合わせる。ぽろぽろとパン屑が白い皿へ落ちた。
「なにを。言うとくけど、遊びやないで。……クソガキは引っ込んどき」
 なにごともなかったように直哉は立ち上がる。トレーを手に下膳棚まで歩いていくと、厨房の職員の声も無視して、皿に残ったカツサンドを胸焼けのするような青いゴミ箱へ捨てた。篠宮は追いかけてこなかった。

 午後はフランス語の授業だった。一番左の一番後ろ、生徒数が少ないため自分の席ではないが、ある種隔絶されたそこに直哉は座っていた。教卓に立つのは外国人教師であり、声を張り上げ解説を繰り返している。耳の奥に刺さるような音色だ。教え方が上手い下手の問題ではなく、おそらくそれは直哉自身の問題だ。静謐とは程遠い喧しい声が脳裡を横切っていく。煩いのは嫌いだ。――たとえその声が担任である、あの増岡のものよりも幾分小さかったとしても、もはやそれは異音としか認識されない。彼女のあとに続くまばらな声。まるで不協和音だ。不協和音のままうさぎ飛びで進んでいく心地。スポ根も嫌いだ。頭蓋骨の間をギイギイと軋ませるようなそれに、直哉は頬杖をつく。
 なにが高校生活だ、青春だ。そんなものクソ喰らえ。

 授業を終えたあと、直哉は瀬古からの連絡を待たず港区のクリニックへ向かうことにしていた。いつもなら遅くとも一時間以内には返事がくるのだが、今日は一切の音沙汰がない。肝心なときに限って、と再三舌打ちをしたが、待つのも嫌いな人間だ。篠宮や増岡に捕まる前にさっさと校舎を脱け出し、帰路につく。広大な敷地を大学側の正門へ向けて突っ切っていく。やがて直哉の目に飛び込んだのは、件の仏語教師と白衣姿の男だった。
「すみません、お休みの日まで。本当に助かりました」
 昨日コンビニで見かけた男とおそらく同一人物だろう。熱心に女を見つめる、照れ隠しに前髪をふるい落とす、手指が心許なさそうに動く、考えなくても、男が女をどう思っているかなどわかるものだ。
「いえ、どうせこのあと帰って授業準備するくらいでしたから」
 そんなふうに女が穏やかに答えながら、西へ渡る光の中を隣り合い歩んでいく。風が吹き、直哉の足もとを覆う影が揺らぐ。どいつもこいつも。舌打ちを拵え、それから一人嘲笑うと直哉は歩き出した。
 駅前は高校生や大学生の軍団が群れをなしていた。それに背を向けるようにコンビニへ入ると昨日と同じように雑誌コーナーに立ってガラスの向こうを睨みつけた。
 右から左へ、ゆっくりと脚を引き摺りながら其れは彷徨い歩いた。スローモーションがかかったように、その瞬間は永遠に思えたという。人間に反応しない呪霊――そのように躾けられてでもいるのだろうか。
「……アンタ、あのときの」
 そのとき、自動扉が開いてスーツ姿の男が入ってきた。グレースーツはやや草臥れているものの、顔立ちから見るにおそらくそう歳はいっていない。だが、目もとには深い隈が刻まれていた。古い油の臭気を纏い鋭く眼光を光らせていた男は、直哉を認めると目をかすかに見開いた。
「高専の呪術師だろ」
 缶コーヒーとタバコを一箱、会計を終えて二人は駅から数分歩いた広場へやってきた。軽快な音を立てコーヒーを開けたスーツの男をよそに、直哉はスクールバックを背中に背負い車止めに腰を預ける。
「それがなんなん」
「そんな格好させられてご苦労なこったな」
 まったくもってそのとおりだ。「どっかのだれかさんたちが能無しなおかげでな」にべもなく吐き捨てた直哉に、「たしかにな」男は自嘲気味に笑う。
 冷淡な印象を受けたが、どうやらそれは仕事の顔らしい。直哉は訝る様子を隠さず、買ったばかりのタバコを開けて一本取り出した男に目を細めた。
「で、手を引くんやなかったんかい」
 本郷――ナルミユウヤの遺体発見現場で直哉を案内したあの刑事だ。ベンチに座り、背広にネクタイまで締めた姿は一見すると休憩中のサラリーマンに見えなくもない。本郷はタバコに火をつけると、「いろいろあンだよ」と紫煙を吐き出した。
「数年前、とある母子の怪死事件があった。その現場に向かったのが俺だった」
 まだあのころは若手でな、と律儀にもベンチの横に据えられた簡易灰皿へ灰を落とす。
「近年稀に見る大雪の日だった。降り積もった雪に点々と残る真っ赤な血をよく憶えているよ」
 事件が発覚したのは深夜零時。辺りが寝静まる住宅地から一本の通報が入った。――妻と娘が血だらけで倒れている。本郷が勇み向かうと、現場は酷い有様だった。家の中は争ったのかそこかしこが荒らされ、窓や壁、そして床には至る所に血痕が見られた。四十代の母親と十代の娘はそれぞれキッチン、そして寝室に倒れていた。腹を裂かれ、内臓を抉られ、まるでなにかの啓示を待つように四肢を大きく投げ出しながら。
 犯人はすでに逃走を謀った後だった。だが、父親が生きていた。犯人の後を追い、雪のしんしんと降り続く中を満身創痍の状態で彷徨っていた。彼も同様に襲われたのだろう、顔じゅうを真っ赤な血で汚しながら裂かれた腹を押さえ脚を引きずり歩いた。
「そのときによく似ているんだ」
 本郷はタバコを吸い、物憂さを晴らすように長く息を吐き出す。
「けど、そのときの呪霊は祓ったはずやで、たしか銀髪の」
「ああ、女性だった。冥という名前だったな」
 そうだ、四年前の冬、閑静な住宅地が地獄と化した。生き残った男によれば、「化け物が妻と娘の体に貪りついていた。自分を襲って逃げていった」という。高専に急遽連絡が入り、一級術師の冥冥が派遣された。現場から約一キロ地点、霊園近くのトンネル内にて該当呪霊は発見された。等級およそ二級から準一級、人語を話し、人肉を喰らうことで《ドウカ》し《ユイイツムニノソンザイ》になるのだと語っていた。だが、最期は冥冥の神風にあえなく散る。事件は幕を閉じた。
「人を喰らう呪霊自体、そう珍しいもんやないで」
 直哉はスラックスに手を突っ込み、冷淡に本郷を見遣る。
「毎年山ほど呪霊の餌食になっとるし、そういう選り好みするヤツもぎょうさん見てきた」
「そうだろうな」本郷は紫煙をくゆらせる。「だが、アンタも見たんだろ、工場の影を」
 先日向かった廃工場だ。事件当時、死亡推定時刻から発見までおよそ三日とかかっていなかったという。だが、季節と遺体の状態により腐敗が早まり、血液と滲出した体液が地面に浸透し始めていた。その痕跡は見事に人間の形を残し、大きく手と足を広げ、今なお儀式を待ち侘びるかのようであった。
「皮膚を裂き、肉体はおろか臓物を抉りその血肉を啜る、御遺体の示す謎のカタチ……」男はタバコを噛む。それは食いちぎる勢いだった。
「そやったら、ソッチは最初っから俺ら関係の事件やと思っとったってわけか」
 ファミレスで瀬古が口にした言葉を反芻する。血肉を体内に取り込むことに執着する例はままあること、実際にカルト宗教に傾倒した人間が、そうした儀式を行なった歴史もある。そこには、呪いの存在のみならず、人間の姿があることも。
 だが、本郷がはっきりと答えることはなかった。
「明かしていない情報がいくつかある」
 ただ、そう声を低めて彼は続けた。直哉は本郷の怜悧な顔立ちの奥に秘めた熱を見破っていた。憎悪、憤怒、そして信念。一見冷めたように見える青い焔だ。眉をあげしらじらとした思いで先を待った。
「今回、連続殺人と思しき事件が最初に起きたのは七月。その数か月前より都内各所で動物の血液や臓物が遺棄されているのが発見された」
「動物?」
「ああ、初めは牛や豚だった。それが、犬、猫のみならず、うさぎなどの小動物。四年前も同様に、直近三か月以内に複数件、そうした動物の死骸や血肉が遺棄されている事例が見受けられた」
 しかし、すでにそのときの呪霊はこの世に存在していない。人肉を喰らう呪霊自体は先述したとおり珍しくない。ただ、その手順や方法を似せるというのは、滅多にないケースだ。たしかに呪殺するとなると似通った死亡例は数多散見される。それでも、胸部から腹部までの裂傷、頭部の損壊――およそその中を抉るだろう傷の付け方、消えた臓器、死体の遺棄法、そして残された謎の動物の血肉。
「裏におるやろうな、人間が」
 すでに四年前の呪霊が祓われているとなれば、新たに事件を起こすには四年前を知る存在が必要となる。模倣犯にしろ連続犯にしろ、すべてが呪霊の仕業と決めつけるのは無理な話だ。未だ見ぬ特級がこの世に存在していなければ、だが。
 呪霊を使い、完全犯罪を遂行させる、古今東西よくある話だ。
「俺は、被害なしに犯人を捕まえるのは無理やと思うで、あの瀬古っちゅうオッサンはどうしても食い止めたいらしいけど」
 本郷は力なく肩をすくめた。
「瀬古さんの気持ちはもっともだろ。なにせ彼は――」
「四年前の事件当事者だから、やろ」
 被せるように言葉を遮った直哉に、本郷は神妙にうなずいた。
「瀬古さんは相当苦しんだだろうな。彼自身、呪霊に襲われながら、なにもできなかった不甲斐なさと憎しみ。後遺症で指先や顔に痙攣が残ってなお、すべてを追い続けている」
 いつのまにか短くなったタバコを灰皿へ押しつけ火を消す。
「なら、アンタが秘密裏に動く理由は」
 てっきり瀬古と裏で示し合わせ、今日まで動いているのだと思っていた。だが、今しがたあのコンビニに来たのはこの男の独断だ。
「確証がない」本郷は言った。先ほどまでの憐憫や同情あるいは悔恨や苦渋の色はない。そこにあるのは一介の刑事としての自負だ。「だから、ただ一人で探り続けている」
 ――四年も? 男は直哉の視線に肯定するように指先を擦り、ジャケットの内側から写真を取りだした。
「先々月、先月と、被害にあった人間のおおよその身元には検討をつけた。これは、俺が勝手に調べたことだが、一人目、港区のサロンに勤務する二十代美容師の女性。事件数日前より、《仕事を辞めて自分を探す旅に出る》と周囲に告げて以来、行方がわからなくなっている。ご家族はすでに亡くなっているため、捜索願は届けられていなかった」
 写真は三枚。一枚目はアッシュグレーのミディアムヘアの女だった。
「二人目、新宿ニノクニヤ書房勤務の二十代男性」――二枚。「そして、十代、コンビニアルバイトの大学生、ナルミユウヤ」 ――三枚。「共通点は?」
 本郷が唾を飲み下す。
 そのとき、二人の携帯がけたたましく鳴り出した。