第一話 鉱国の姫君
すべての始まりは、ディアンシーと人間の男が恋に落ちたことだった。 昔々、カロスのとある地方ではメレシーやディアンシーたちが洞窟や岩の中に王国を築いているというのは有名な話であったが、実際にその姿が確認されたことは数百年数千年のうちほんの一…
第二話 おとぎ話
「おやじ? ああ、もうこっちに帰ってきてる。すまないけど、約束の時間には間に合いそうにないんだ。うん、ちょっと、いろいろとあってね。落ち着いたらまた連絡する」 ふう、と息をついて、ダイゴは通話を切った。ツワブキムクゲ、その名が映し出された画…
第三話 運命の鐘
そうして始まった不可思議な同居生活は、思いのほか新鮮でもあった。彼女が世界をそう思っているからかもしれない。現代文明を目の当たりにしてヘーゼルの瞳をこれでもかと輝かせるさまは、ダイゴの中の子どもじみた優越感をやさしくくすぐった。 だが、同…
第四話 失楽園
カイナはホウエン屈指の遊水地だ。南に広がる一〇九番水道には連日海水浴客がパラソルを立て、雄大なえんとつ山を背に烈日を浴びている。陸地にはひときわ賑わう市場や、造船所にコンテスト会場、それからうみのかがくはくぶつかんもある。ダイゴはその昔父と…
第五話 罪と罰
夜、喉の渇きに目が覚めて二階のダイニングへ出ると、窓辺にかけられたレースのカーテンに小さな影が揺らいだ。「眠れないのかい」 月は傾き、山際に姿を消そうとしている。そっとカーテンをかき分けてその影に近づくと、彼女はゆっくりふり返り、ダイゴを…
第六話 永訣の朝
小さいころから、護るべきものはすべて護ってきたように思う。手にしたいものも手にしてきたし、それを自分のものにするために、努力も惜しまなかった。だが、世の中にはどうにもならないものが多々存在する。手を伸ばし、その手の中に掴んだはずなのに、あ…
エピローグ
――――………… ――――…… ―――― ―― 「おい、知ってるか。昨晩、向こうの浜辺に死体があがったらしいぜ。なんでも男女の死体で、顔や体はパンパンに膨らんでいた…
――すべての始まりは、ディアンシーと人間の男が恋に落ちたことだった。
