翌朝、騒がしさに目を覚ました。
「……なにこれ」
ドタドタと小刻みな地響きが伝わってくる。それから、金管楽器やシンバルの音。なにかが暴れているのとも違う、規則的なマーチ。そ昨日とは打って変わって賑やかなそれに、美月はベッドを下りて窓際に寄る。
「パレード?」
だが、窓の向こうに広がるアンダージュノンの様子は夜と一緒だった。
「上からのようだな」
床で眠っていたレッドが起き上がって耳を立てた。
「そっか、上ね。なにかお祭りでもあるのかしら」
美月が上空の鋼鉄を眺めたそのとき、プルルルル、とPHSが鳴った。
「――どうした」
クラウドが重々しい動作でシーツの中から手を伸ばし、それをとる。まだ完全に目が冷めていないらしく、上体を起こしたが、左手で頭を抱えていた。
「ああ、わかった。すぐ準備する」
「どうしたの?」
窓に背を向けて訊ねる。手前のベッドではまだユフィが眠っていた。
「ティファたちが町についた。どうやら、上でルーファウスの歓迎式典が行われるらしい」
クラウドは気怠げに二、三、頭を振るったあと、険しい顔で答えた。
「ルーファウスって、ルーファウス神羅?」
「ほかにだれがいるんだ」
立ち上がり、すげなく準備をしだすクラウドに多少ムッとしながら、美月はレッドと目を見合わせて小さく頷く。
「ユフィ、起きて。準備するよ」
トントンと肩を揺するが、目の前の少女はなかなか起きてはくれなかった。
「ミツキ!」
外に出ると、大きく手を振るエアリスに迎え入れられた。空が見えないのに、太陽を見た心地になって美月の涙腺は緩む。ぐっと心を引き締めてわざとだらしなく笑ってみせると、美月も手を振り返した。
「おつかれさま、道中大丈夫だった?」
「うん、だいじょぶだいじょぶ。こう見えてスラムの女は強いんだから」
拳を握ったエアリスの華奢な腕に美月はくすりと笑う。だが、彼女の言うことは正しい。平穏な暮らしを送っていた美月と比べると、可憐なエアリスでも戦う力を持っている。
「ティファは?」
「バレットと一緒に向こうのエレベーター見に行ってる。どうにかして、上、上がりたいんだけど、神羅兵がいてだめなの」
絶えず上からは音が降り注いでいる。鋼鉄の空を見上げると、心なしか音に揺れているような錯覚がした。
「上、上がれないんだ……」
「そうみたい。もしもほかの大陸に行くならここで船に乗らなくちゃ、って道具屋のおじさんが言ってたけど、困ったね」
エアリスが唇をすぼめて天を仰ぐと、ちょうどバレットとティファが戻ってきた。
「どうだった」クラウドが訊ねる。
「どうにもこうにも、あいつらが話を聞くわけないだろ」
今にも銃を放ちそうな様子だ。そんなバレットにティファが続く。
「上に行きたいって言っても、全くだめだったわ。外からもジュノンには行けないみたいだし……どうする?」
ルーファウスの就任パレードの終了までは出港もないことだろう。だが、船に乗るならば、確実にこの呑気なマーチが流れている間に上部のジュノンに行く必要がある。
クラウドは睨むように辺りを見回した。
「どうにかして上に行く方法はないのか」
その途中目が合って、美月は息を呑む。美しく冴えた虹彩。整った顔。忽然と、宵闇に漂った空気を肌が思い出す。だが、そんな美月とは違い、クラウドはまばたきをひとつしただけですぐに何事もなかったかのようにやり過ごした。
「ミツキ?」
もやもやする気持ちを抱いた美月にエアリスが声をかける。はっと我にかえって、美月は、ううん、と笑うと皆と同じように辺りをぐるりと見渡す。
「お兄ちゃん!」
そのとき、ひときわ甲高い声が聞こえてきた。
目を覚ましたという少女、プリシラに連れられて入り江まで行くと、彼女は昨日のお礼だと言って、召喚獣シヴァのマテリアとイルカのホイッスルをクラウドに渡してくれた。
「これ、お兄ちゃんにとくべつ! 昨日は神羅と勘違いしちゃってごめんね?」
そう頬を染めてクラウドを見上げる顔は、まさしく乙女の顔だ。優しく、「かまわないよ」と返すクラウドと少女のやりとりを見守りながら、あの子、もしかして……と思っていると、ティファとエアリスも同じことを抱いていたようだった。
「なにしたの?」と半目で責め立てられ、クラウドは「いや、その……助けただけだ」と心持ち悪そうにはぐらかす。だが、ユフィがそれを黙って見ているわけがなかった。
「そういえばミツキは寝てたけどさ」とニヤニヤ笑いを浮かべたユフィによれば、アンダージュノンに着いてしばらく町を散策していたときに、この入り江であの少女がモンスターに襲われているところに遭遇した。そこで、際に運悪く水を多量に飲んで気を失ってしまったプリシラを、クラウドが人工呼吸をして助けたのだという。
「あーあ、オトメのジュンジョーってやつをもてあそんで! 責任はとらないとな、クラウド」
ぽんぽん、とユフィに背中を叩かれて、クラウドが ホイッスルを握りしめる。
「だからあれは不可抗力で」
「でも、あの子にはファーストキスだったんでしょ?」
ティファが詰め寄る。
「それは……」
「クラウド、ちゃんとしなきゃ」
にこにこしながら追い討ちをかけるエアリスに頭を抱えてため息をこぼした彼をこのときばかりは同情する美月だった。
「このホイッスルを吹くとねイルカさんがジャンプしてくれるの。だから、あの柱の上にお兄ちゃんなら跳べると思う!」
少女が試しに笛を吹いてみると、それに合わせてイルカが高くジャンプする。水族館で見るような立派なそれに美月は思わず拍手をしていた。
「すごい! こんなことできるなんて!」
「たいしたもんじゃねぇか!」
バレットまでもがこの凄技を褒め称え、プリシラは嬉しそうに頬を緩める。マリンを思い出すのか、バレットの表情は柔らかかった。
「でも、こんなところにイルカがいるとは」
美月は屈んで足元に寄せる波に手を浸ける。温度はそれなりに低いようだが、お世辞にも綺麗と言える水質ではなかった。かろうじて浅瀬の底は見えるが、柱の下までいくと水は灰色に濁りその深さを測ることはできない。
「おじいちゃんおばあちゃんが言うにはね、ここは昔とっても綺麗な海だったんだって。でも、神羅が上に町を作ってから、太陽の光も当たらなくなって、海は汚れちゃった」
プリシラはあどけない目元にたっぷりと憂いを載せて、海を見つめている。
「そんな話を聞いてばっかだったから、わたし、神羅が憎くてしょうがないの」
寄り添うようにイルカが水面を揺らしプリシラの元へ戻ってきた。もとはもっと綺麗な水で暮らしていたかもしれないのに、それでもここを離れないのは、よほどこのイルカはプリシラのことが好きなのだろう。
「ちくしょう、神羅め!」
バレットが砂を蹴る。
「ルーファウスに一発泡を吹かせてやらねぇと気がすまねぇぜ!」
下では今まさに自然が奪われているというのに、いまだ歓迎式典のリハーサルは続いている。クラウドたちにとっては船までの時間に猶予ができるとはいえ、なんとものんきなものだ。だが、プレジデントやルーファウスのことを思い出すと、この無情な状況にも肯ける。
「でも、ひとまず上に行かなくちゃよね?」
ティファの言葉に、バレットは静かに首を振る。そして、クラウドを見ると、「頼んだぜ」と鼻息を荒くして言った。
「だから、なんで俺なんだ……」
「こういうのは、クラウドがうまくやってくれる、でしょ?」
エアリスに言われては、なにも言えないクラウドである。
*
「柱の下にはつよーい電流が流れてるから、気をつけてね!」
なにはともあれ、少女の純な初恋により上に行く手段を手に入れた一行は、ひとまずクラウドに上へ跳んでもらい状況を確かめることになった。
「アンタは、どうするんだ」
うまくいったらオレたちも行くからよ、と言うバレットにPHSを預けて、クラウドが美月を見遣る。
さすがに、イルカジャンプで十メートルは越える高さにある鉄棒に乗れる自信はない。が、それだけのことを言っているわけではないようにも思えた。その視線に狼狽えながら、「そうね……」と美月が口ごもると、ドン、と軽い衝撃が背中に訪れた。
「ミツキはユフィちゃんに任せなって!」
ユフィだ。背中からぎゅっと抱き、肩口に顎を載せてクラウドに得意げな顔を向けている。
「信用ならないな」
「どういうことさ!」
やれやれと肩をすくめるクラウドに、彼女はべえっと舌を出す。クラウドは取り合わなかった。ユフィから視線をあげると、再三美月の目をじっと見つめた。
「とにかく、このアンタはいいのか」
美月は数秒、黙り込んだが、静かに頷いた。
「ジュノンに上がったら、セフィロスのことを訊いて、船に乗り込めばいいのよね?」
「ああ。なるべく早く合流する」
「わかった。でも、ユフィもそれにエアリスたちもいるからきっと大丈夫」
むりしないで、と労う美月に、クラウドはムッとした表情を浮かべた。その顔に戸惑いを覚えつつ、「そうだ! そうだ!」と加勢する背中のユフィに合わせて美月はとにかく笑ってみせる。
わかった、と、ため息を土産にクラウドが折れた。
ピーッという合図とともにイルカに乗ったクラウドが柱の上に消えて、美月たちはしばらくアンダージュノンで待機したのち、作戦を練った。クラウド同様イルカジャンプで上がってもよかったのだが、さすがに何人も連続するのはかえって怪しがられるだろうと却下になった。
「ミッドガル以外に、こんなところがあるなんて知らなかったな」
次の手を探す間、憂え顔でティファが鋼鉄の空を見上げている。彼女にとってミッドガルスラムは第二の故郷でもある。どこか懐かしさもあるのかもしれない。だが、そこにすら帰れないのだから皮肉なものだ。
そんなティファのうしろ、美月も無意識に耳元のピアスを触りながらクラウドが消えていった柱の上を見つめていた。
「ねえミツキ、クラウドとなんかあった?」
エアリスが耳打ちをしてきた。
え? と目を瞬く美月に、エアリスはにっこり笑って、しい、と唇に指を当てる。
「だいじょぶ、気がついてるのわたしだけ、だから」
とは言われても――美月は眉を下げる。
「なんにもないよ」
「ほんとう?クラウドのこと、なんだか気にしてるカンジだったから」
ときどき、エアリスにはいろんなことが見えているんじゃないかと思うことがある。抱いている感情がふっと彼女の手に攫われるようなそんな感じだ。それに、彼女の翡翠色の瞳に見つめられると、なんでも話してしまいそうになる。
そんなこと……と美月が言葉を濁すと、エアリスは後ろ手に手を組んで、美月の顔を下から覗きこんだ。
「あ、わかった。クラウドのこと、意識、してる?」
美月はギョッとした。
「意識なんて!」
思いのほか大きな声が出て、ハッと口を押さえる。これでは、そうだと肯定しているようなものじゃないか。慌てて、「ほんとう、そんなんじゃないの」と苦く笑う。
「ふうん、いいなって思ってたり、しないの?」
「それは……見た目はかっこいいし、頼りになるな、とは思うけど」
「けど?」
愉しげに頬を上げて追及してくるエアリスに、美月はやれやれと息をついた。
「とにかく、そういう対象じゃないの」
エアリスは唇を尖らせる。
「もしかして、遠慮、してる?」
「ティファにってこと? 全然」
いつのまにか、ティファはバレットのもとまで歩いていったみたいだ。彼やレッドたちと話をしていて、ティファはこちらに気づく様子がない。それを見据えると、美月は一瞬遠くを見るように目を細めた。
「わたしは、いつか帰るかもしれないから――それより! エアリスこそどうなの?」
パッと空気を切り替えてしたり顔を浮かべる美月に、エアリスは、「はぐらかした!」とついぞ頬を風船のように膨らませた。
そうこうしているうちに、ユフィの提案により、神羅兵を眠らせてエレベーターを使うことになった。あまり騒ぎは起こしたくないのが心情ではあったが、エアリスと美月が神羅兵の気を引いているうちにユフィがこっそり首に手刀を入れて気を失わせると、彼の制服をティファが拝借し、エレベーターに乗り込んだ。善良な神羅兵を装い上まで美月たちを案内するというシチュエーションまで作り上げるあたり、抜かりがない一行である。
あっという間に上へ上がるとついに式典が始まったのか、けたたましい音が鳴り響いていた。
「このまま、私は神羅兵と接触して船に乗る方法を探りながらクラウドと合流するわ」
というティファ、バレット、そしてエアリス三人と分かれ、残る美月たちはアルジュノンへ向かった。黒マントの男について聞いて回り、情報が見つかり次第、安全を確保してくれているだろうティファたちと合流するという作戦だ。
「なんか、ミョーな街だなぁ」
ルーファウスの乗った車が通り過ぎてしばらく、ユフィがきょろきょろと辺りを見渡しながら言った。
舗装された道路に、パリのアパルトマンのごとく立ち並んだ建物、そこには真っ赤な横断幕がかかっている。ジュノン右方部、アルジュノン。一見すれば海辺のそれなりに栄えた街にも見えなくないが、道なりに進んだ先に見えるのが大きな砲台だ。鮮やかな紺碧に向けて突き出た砲身はジュノンを簡単に呑み込んでしまうのではないかというほど大きい。あれを食らったらひとたまりもないだろう。
そんな物々しい風景に、人々の生活が馴染んでいる。建物は住居も兼ねているのだろう、窓からは住人が身を乗り出し、過ぎていった神羅兵の行進へと手を振っている。またほかの階では、タバコを吸う瀟洒な女性や、花壇に水をあげる老人、それから、待ってましたとばかりに紙飛行機を飛ばす子どもの姿が映る。
「この街の人たちにとっては、当たり前なんだろうね」
「うげぇ。こんなデッカイ兵器があるところなんて、ゴメンだなぁ」
はらり落ちてきた飛行機をキャッチして、子どもたちに手を振る。不器用に手折られたそれは、このままでは飛びづらい。開いて折り直すと、まっすぐに飛ぶ紙飛行機が出来上がった。
「大砲に向けて飛ばしたら、神羅兵に怒られるかしら」
「えぇ、ミツキ一人でやってくれよ! アタシ怒られたくないかんね!」
足下のレッドまでもが呆れてみせたので、だよね、と笑うと美月はそれを海へと飛ばした。
街には神羅兵が残っていたが、もはや平常を取り戻しているようでもあった。熱狂のあとの、妙な静けさとでも言えようか。どこか倦怠感を纏った海辺の空気を浴びながら、美月たちは街を歩き回った。
道具屋や武器屋、それから新羅兵の宿舎などアルジュノンをしらみつぶしに探すと、エルジュノンに移る。場末の宿屋まで行くと、やっとのことセフィロスの情報が手に入った。
宿主によれば、黒マントの男が街をうろついていたという。しかし、それも二、三日前のことであり、その後は行方知れずとなっているらしい。すでに大陸を越えてしまっただろうか。落胆する美月たちだったが、「ひとまずティファたちと合流しよう」というレッドの言葉に、宿屋の店主に礼を述べて外に出た。
「あーあ、その黒マントの男も忙しいヤツだね」
「クラウドが言うには、星を危機に陥れようとしているらしいからな」
「ハァ?絶対、うさんくさいオッサンでしょ」
そんなユフィに苦笑しながら美月はPHSを取り出す。だが、直後、思いがけない言葉が耳に入った。
「そういや、あの黒マントの男にやられたの、うちの兵士なんだろ?」
神羅の社員らしきスーツの二人組がそう話しながら歩いていく。
「やられた……?」美月がPHSを持つ手を下げる。
「たまんねぇよなぁ。戦争に行ってるわけじゃねぇのに、いきなり殺されなきゃならないなんて」
「ホント。噂じゃあの男、セフィロスらしいぜ」
「英雄の? 死んだんじゃなかったか?」
「そうらしいけど、どうだかな。ソルジャーなんてのは、化け物に近いからな」
横を通り過ぎた彼らは、どうやら神羅の会員制バーへ行くらしい。美月はレッドと顔を見合わせて、あとを追いかける。
「テロリストに社長が殺されるわ、今度は英雄が生き返るわ、さらには宝条博士までこんな時期に休暇届を出して、やってらんねぇよ」
「新しい研究も、結局博士が飛んだから手詰まりだしな」
おそらく、二人は科学班の職員だろう。ジュノン配属の科学班職員なのか、それとも本社からこちらへなんらかの用事で来ているのかはわからないが、美月たちに気づく様子はない。この調子なら、とにかくうまくいけば有益な情報が得られるかもしれない。セフィロスだけではなく、自分のことについても。
「ミツキ、この先は危険だ」と声を低めるレッドを無視して、美月は男たちのあとについてバーに入ろうとする。
「そっかおまえあのチームだったか。たしか、タークスが捕えたっていう……」
カラン、ドアが開き、その後ろからするりと潜り込もうとした美月だったが、その先にとんでもないものを見つけてしまった。
「ん、タークスがなんだって?」
燃えるような真っ赤な髪に、額のゴーグル。それから、胸元を大きく開け放ったスーツの着こなし――レノだ。
「やめてくださいよ先輩、お酒を飲んだからって絡まないでください! そろそろ行かないと、社長にサボってるのがバレますからね」
すぐそばにはイリーナもいる。へえへえ、と気怠くグラスを煽ると、レノは席から立ち上がった。
「なぜこんなところにお前たちタークスが……」
まずい! 言葉を失う二人の後ろで、美月は咄嗟に店から出ようとする。だが、そうする間もなく、「おつとめごくろーさん」とレノがこちらへ歩み寄ってきてしまった。
「お?」
グレーのスーツの間から、孔雀色の瞳とがっちり目が合う。
(やばい!)
カランッと盛大にベルを鳴らして、美月は走り出した。
「どうしたミツキ」
「なになに、なんかいたの?」
飛び出てきたミツキにレッドとユフィが驚く。「今すぐ逃げなくちゃ」美月は半ば叫んだ。
「は?」
「タークス! タークスがいたの!」
状況を察したレッドは、まずいなと呟いてすぐに美月を路地裏に先導する。
「ちょ、ミツキ待ってよ!」
「急いでティファたちと合流しよう。電話できるか、ミツキ」
「う、うん!」
全速力で駆け抜けながら、美月はポケットからPHSを探る。だが、取り出したところで、手の中からすり抜けてしまった。
「あっ」と、落ちていくPHSを目で追いかける。
「っぶなー!」
ユフィが間一髪それをキャッチした。
「ごめん、ユフィ!」
「もー、気をつけてよミツキ! で、ティファに電話すればいいんだっけ!」
「うん! セフィロスの情報手に入ったのと、タークスが……」
路地裏を回り、船着場へと向かおうとコーナーを曲がるところだった。レッドに続いて路地裏を勢いよく抜けると、美月は飛び出しざまに誰かにぶつかってしまった。
「ミツキ!」
強い衝撃に美月は尻もちをつく。ユフィが慌てて駆けつけるが、彼女を助ける前に、茶色いブーツと白いズボンの裾がそれを遮った。
「貴様、ルーファウス社長にぶつかって謝りもしないとは!」
「ハイデッカーくん、構わない」
太陽の光を反射するプラチナブロンドと、氷のような青い瞳。美月の全身から血の気が引いていく。
「どうやら、どこかで見たことのある顔のようだ」
なんで、こうなるの。頭を抱えたい美月だった。
